「陸」の慎太郎、西郷も認めた「節義の士」(産経新聞)

 慶応3(1867)年11月15日、坂本龍馬と中岡慎太郎が襲撃された「近江屋」は今の河原町蛸薬師交差点の近くにあった。京都で一番の繁華街として多くの若者を集める河原町通だが、当時は道も今ほどの広さはなく路地程度。裏は多く寺が並び夜ともなると、ひっそりとしていた。

 当日は、慎太郎が近江屋を訪ね、2人は母屋の2階で火鉢を囲み話し込んでいた。慎太郎が以前住んでいた土佐藩御用達の書店「菊屋」も河原町通沿いにあり、近江屋とは徒歩数分。慎太郎は菊屋に向かい、菊屋近くの土佐藩の谷干城宅をのぞいた後に近江屋を訪ねている。

 午後9時過ぎ、「十津川郷士」を名乗る数人の男が近江屋を訪ねてきた。十津川郷士に知り合いがいることから通したところ、いきなり襲われ、龍馬は翌日未明に死亡。28カ所を切られた慎太郎も17日昼過ぎ、「早く倒幕を実行しなければ敵に逆襲される。同志の奮起を望む」と言い残し、亡くなった。

 今は現場を記した石碑が残るだけだが、雑踏の中で足を止め、カメラに収める若者がいるなど、2人の人気の高さを物語っている。

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 慎太郎は天保9(1838)年、土佐有数の大庄屋の長男として生まれる。武市瑞山らから剣術や学問を習得するが、20歳のとき父が病気で倒れると帰郷し、大庄屋見習いとして農民のために尽力。凶作で困窮する農民に木を切った後の植林の徹底、田畑の開墾、緊急時のための貯蓄などを指導して難局を乗り切る。

 慎太郎は庄屋見習い時代の経験から、「民衆の安定した生活があってこその国」と考えていた。そのため人の能力を結集し、諸外国との対等関係を築くだけの力を持った国づくりを理想としていた。

 文久元(1861)年に土佐勤王党に入り、志士として活動をスタートするが、土佐藩の勤王党への弾圧が始まると脱藩。その後は長州に入り、元治元(1864)年の蛤御門の変、四国連合艦隊の下関攻撃で参加するなど武闘派としての印象が強い。

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 こういった戦いを経て、慎太郎は薩長同盟の必要性をいち早く悟っていく。同年12月には西郷と、翌年の慶応元(1865)年4月には桂小五郎と会談し、同盟実現の可能性を打診。そのほかの両藩の有志とも会合を重ねるなどし、慶応2(1866)年1月、今の同志社大学辺りに(京都市上京区)にあった薩摩藩邸で薩長同盟を成立させた。

 慶応3年6月、京都で薩長に土佐を加えた同盟を締結。7月には、現在の京都大学農学部(京都市左京区)周辺にもあった土佐藩邸内に「陸援隊」を編成。自ら隊長となって新型銃の訓練を行うなど、倒幕の準備を怠らなかった。

 「海」の龍馬に対して「陸」の慎太郎。円山公園内(京都市東山区)に、遠くを見つめる立ち姿の龍馬の横に片ひざを立て、しっかりと前を見据える慎太郎の銅像がある。まさに、この名コンビの関係を的確に表している。

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 慎太郎は、当時としては珍しく笑顔を浮かべた写真を撮影している。武闘派とはいえ実直で誰とでも表裏なく付き合え、西郷隆盛も「節義の士」と評す。さらに弁舌がさわやかで、もめ事を片づける名人だったという。

 八・一八の政変で都落ちした三条実美らのため、度々京都に入っては情報を集めた。近江屋事件前には、公武合体派として三条の政敵で京都の北の外れに隠棲中の岩倉具視を訪ねたさい人間の大きさを知り、三条との和解に尽力もした。

 その岩倉が慎太郎の死を知ったとき、「誰が私の片腕を奪った」と嘆き悲しんだといわれている。

 最後に幕末史に詳しい霊山歴史館の木村幸比古学芸課長に「2人が長生きしていれば」と聞いてみた。木村学芸課長は「龍馬は外国相手の貿易商。慎太郎は総理大臣になっていたかもしれませんね」と答えた。(園田和洋)

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